抗サイログロブリン抗体の概要
この項目は、血液中の抗サイログロブリン抗体の有無を調べる検査です。
サイログロブリンとは、甲状腺ホルモンの前駆物質で、甲状腺濾胞細胞で合成・貯蔵されている糖蛋白で、免疫異常によりサイログロブリンに対して出来る抗体が抗サイログロブリン抗体です。
抗サイログロブリン抗体は、橋本病で7~8割、バセドウ病で5~6割で高値を示すため、自己免疫性甲状腺疾患における診断に有用な検査です。
抗体と自己抗体
                抗体とは、自分のカラダ以外のもの(細菌・ウイルスなどの異物、がん細胞など)を異物とみなしてこれを排除しようとする蛋白で、生体防御に重要な役割を果たしています。
自己抗体とは、免疫機能の異常により、本来異物ではない自分の成分を異物と認識して抗体がつくられ、自分自身の細胞を攻撃してしまうものです。
抗サイログロブリン抗体と橋本病
抗サイログロブリン抗体は橋本病において高頻度で高値を示すため、橋本病の診断基準の1つとして含まれています。
慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドライン 
                ※日本甲状腺学会 「甲状腺疾患ガイドライン 2010」より抜粋 
                a)臨床所見 
                1.びまん性甲状腺腫大 
                但しバセドウ病など他の原因が認められないもの 
b)検査所見 
                1. 抗甲状腺マイクロゾーム(または TPO)抗体陽性 
                2.抗サイログロブリン抗体陽性 
                3.細胞診でリンパ球浸潤を認める 
慢性甲状腺炎(橋本病) 
                a)および b)の 1 つ以上を有するもの
 【付記】 
                1.他の原因が認められない原発性甲状腺機能低下症は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。 
                2.甲状腺機能異常も甲状腺腫大も認めないが抗マイクロゾーム抗体およびまたは抗サイログロブリン抗体陽性の場合は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。 
                3.自己抗体陽性の甲状腺腫瘍は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いと腫瘍の合併と考える。 
                4.甲状腺超音波検査で内部エコー低下や不均一を認めるものは慢性甲状腺炎(橋本病)の可能性が強い。
検査の目的
自己免疫性甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)の診断補助として
参考基準値(単位:IU/ml)
28未満
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
抗サイログロブリン抗体が高値を示す病態
橋本病、バセドウ病、特発性粘液水腫 など