尿ビリルビン

尿ビリルビンの概要

この項目は、尿の中にビリルビンが含まれているかを調べる検査です。

尿にビリルビンが含まれている場合、黄褐色の尿となり、尿の泡まで黄色いのが特徴です。

まずはビリルビンについて簡単にご説明しましょう。

ビリルビンとは、赤血球が寿命を迎えて体内で壊された時に、赤血球中のヘモグロビンが代謝されてできる最終代謝産物です。

ビリルビンの代謝と尿ビリルビンの関係

ビリルビンの代謝

赤血球は寿命を迎えると肝臓、脾臓、骨髄などの網内系細胞によって壊され、ビリルビンができます。

このビリルビンは、蛋白質とくっついた状態で肝臓に運ばれます。
この蛋白質とくっついたビリルビンを間接ビリルビンと呼びます。

間接ビリルビンは肝臓に運ばれ、蛋白質が取り除かれ、グルクロン酸抱合と呼ばれる処理が行われます。

このグルクロン酸抱合を受けたビリルビンを直接ビリルビンと呼びます。
直接ビリルビンは胆汁中に排泄されます。

胆汁中に排泄された直接ビリルビンは、腸内細菌によってウロビリノーゲンとステルコビリノーゲンとなり、このほとんどは便に混じって体外に排泄されます。

しかし一部は腸より吸収されて肝臓に戻り、再度ビリルビンとなって胆汁中に排泄されます。

このように一度排泄されたビリルビンが、形をかえて腸から吸収され、ふたたび肝臓にもどってビリルビンとなって胆汁中に排泄されることを、腸肝循環と呼びます。

ビリルビンの尿への排泄について

上記のビリルビンの腸肝循環の説明でお分かりのように、ビリルビンは、通常なら尿に排泄されることはありません。

尿の中にビリルビンが出現するということは、なんらかの要因でこの腸肝循環が障害されたり、またビリルビンが胆汁中に排泄できないなど直接ビリルビンが血液中に増えている状態です。

直接ビリルビンの血液中濃度が2.0~3.0mg/dl以上になると腎臓から尿の中にビリルビンが排泄されるようになります。

尿に排泄されるビリルビンは直接ビリルビンであり、間接ビリルビンは排泄されません。

間接ビリルビンが尿の中に排泄されない理由

間接ビリルビンは蛋白質とくっついた状態であるため、腎臓にある糸球体を通過できないためです。

尿ビリルビンと各病態

上記で記しましたように、尿の中には直接ビリルビンのみが排泄されるようになります。

排泄される原因は以下のとおりです。

閉塞性疾患によるもの

直接ビリルビンは、胆汁中に排泄されますが、この胆汁が流れる経路である胆管が閉塞することにより、直接ビリルビンの排泄障害が起こり、その結果、尿の中にビリルビンが排泄されるものです。
胆石などにより起こります。

肝疾患によるもの

肝細胞の機能低下により血液中のビリルビンの取り込み不良やグルクロン酸抱合能力の低下、ビリルビンの胆汁中への排泄不良などにより、直接ビリルビン及び間接ビリルビンが増加するもので、直接ビリルビンが増加した場合、尿の中に排泄されるようになります。
肝炎、肝臓がんなどで起こります。

体質によるもの

遺伝的な影響で直接ビリルビンの増加が起こり、尿の中へビリルビンが排泄されるものです。
Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群などで起こります。

検査の目的

1)尿のスクリーニング検査として
2)肝障害や胆道系疾患を疑う時

参考基準値

マイナス (-)

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

尿ビリルビンが陽性を示す病態

肝細胞性黄疸(肝細胞の障害)
肝炎、肝硬変、肝臓がん など

閉塞性黄疸(肝外胆管の閉塞)
胆石症、胆管結石、胆嚢がん、胆管がん、膵頭部がん など

体質性黄疸
Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群 など

検査時の注意事項

ビリルビンはそのままにしておくと、
①光に当ると分解されてしまう
②酸化されてビリベルジンに変化してしまう

上記の理由から、尿に含まれるビリルビンが減少してしまうため、ビリルビンを検査する際は、新鮮な尿を用いるようにしましょう。

尚、医療機関で採取してそのまま検査してもらうのが一番ですが、どうしても家などでとった尿で検査しなければならない場合は、密閉できるきれいな容器に尿を入れ、布やアルミホイルで遮光して、なるべくはやく検査をするようにしましょう。

また、ビタミンCが尿の中に多量に存在すると、ビリルビンが存在していても、反応が阻害されて偽陰性になることがありますので、検査前にはビタミンCを多く含む食品の摂取は控えましょう。